#009 松塩クリニック透析センター 診療放射線技師 小野 隆明
令和4年度より医療法人金剛に入職致しました、診療放射線技師の小野隆明と申します。
これまでに大学病院・総合病院で経験を積んで参りました。入職から間もなく、松塩クリニック透析センターでの骨密度測定装置導入プロジェクトに携わらせていただき、7月無事に設置完了致しましたので、ご紹介させていただきます。
【骨密度と骨粗しょう症】
骨密度検査とはその名の通り、骨の密度を調べる検査です。骨粗しょう症という病気は骨密度が低い=骨がスカスカな状態であり、ちょっとした転倒でも骨折しやすくなってしまいます。骨密度は年齢と共に低下していくので、高齢化社会の進行に伴い骨密度検査のニーズは高まっています。
【骨密度測定検査の意義】
とはいえ、骨密度の測定は、心臓や脳の検査・がん発見のための検査に比べれば重要度は低いのでは?と思われるかもしれません。が、実は、骨密度の検査には大きな意義があります。高齢で大腿骨や腰椎などの骨折を受傷すると、リハビリが進まず寝たきりになりやすく、そうなれば、QOL(クオリティオブライフ=生活の質)が著しく低下し、健康寿命は大きく低下してしまいます。ご家族の方の介護負担も増えます。しかも骨折の怖いところは、予期せぬ転倒などで、“突然”寝たきりになってしまうかもしれないことです。その他の病気も突然発症するリスクはありますが、重大な骨折を防ぐことは、そうした病気を防ぐことと同様にとても重要なことなのです。
【DEXA法】
一般に健診や検診などでは、放射線被ばくがなく簡便な“超音波法”を用いて、かかとの骨密度検査が行われています。一方、今回当院に設置されたのは、X線を用いた“DEXA法”という検査方法の装置です。X線は、人体を通過する際、エネルギーが大きいほど通過しやすいという特徴があります。DEXA法では、この特徴を利用し2種類の異なるエネルギーのX線を用いることで、骨とそれ以外の組織の通過しやすさの差を詳しく測定し、骨密度の精密な情報を得ることができます。骨密度の測定にはいくつか種類がありますが、中でもDEXA法は、その正確性と安全性から、最も推奨される検査法とされています。当院に設置された装置は、放射線を用いる骨密度検査法の中でも被ばくが最小レベル(胸部レントゲン撮影の1/5~1/2程度)であり、身体への影響もほぼ心配する必要がありません。
【なぜ透析施設に必要なのか?】
さらに、どうして透析施設に骨密度測定装置が必要なの?とも思われるかもしれませんが、実は、骨粗しょう症は透析患者様に深い関係があります。腎臓には血液中のリンやカルシウムの量を調節する役割があります。透析患者様は腎臓機能が低下していますので、この調節の役割がうまく働きません。そのため、骨量減少が進みやすく、健常者の5倍程度も骨折のリスクが高いという報告もあります。骨密度を定期的に測定することで、骨折リスクを評価・管理しながら、患者様に合わせた適切な食事・服薬等の指導を行ったり、その成果を検討したりすることが出来ます。
【治療について】
あまり知られてはいませんが、骨は吸収と再生を繰り返しており、同じ骨粗しょう症でも原因は様々です。例えば、骨の吸収が多く再生が間に合っていない方、骨の再生自体がうまくいっていない方、閉経後急激に骨密度が減少してしまう方などがいます。当然、個々の患者様の状況に合わせた投薬が必要です。もちろん、バランスのいい食事や適度な運動も必要です。
当院は薬剤師・管理栄養士が常駐しており、医師を中心に多方面からのアプローチを行って参ります。このような骨粗しょう症におけるチーム医療はリエゾンサービスと呼ばれています。
リエゾンサービス|日本骨粗鬆症学会 Japan Osteoporosis Society (josteo.com)
“リエゾン”とは、“関係”、“連絡”、“つなぎ”という意味のフランス語です。医療の現場では、多職種の担当者が連携して患者様の診療に当たる仕組みを指します。今回の骨密度測定装置の導入は、松塩クリニック透析センターのリエゾンサービスの取り組みの一環でもあります。
今回は、骨密度測定装置についてご説明させていただきました。導入に当たり、装置メーカー側との折衝や様々な書類の作成・役所への提出など慣れない業務に奔走しながらも、新しい知見を得られ、やりがいのある楽しい日々を過ごすことができました。今後も患者様により良い医療をお届けする一助を担っていくことができればと思います。
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松塩クリニック透析センター > 部門紹介 > 放射線部門
<掲載日時 : 2022年08月10日>